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最高裁判所第三小法廷 平成4年(行ツ)197号 判決 1993年6月08日

メキシコ国

メキシコ市四デー・エフ・スリバン五一

上告人

ソウサ・テスココ・ソシエダ・アノニモ

右代表者

イサック・L・シラー

ウベルト・デュラン・シャステル

右訴訟代理人弁理士

松田喬

東京都千代田区霞が関三丁目四番三号

被上告人

特許庁長官 麻生渡

右当事者間の東京高等裁判所平成二年(行ケ)第二七九号審決取消請求事件について、同裁判所が平成三年一二月一八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人松田喬の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程にも所論の違法は認められない。論旨は採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 可部恒雄 裁判官 貞家克己 裁判官 園部逸夫 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 大野正男)

(平成四年(行ツ)第一九七号 上告人 ソウサ・テスココ・ソシエダ・アノニモ)

上告代理人松田喬の上告理由

一 上告理由第一点とするところは原判決は、「二 成立に争いのない乙第一号証ないし第七号証、弁論の全趣旨によって成立の認められる乙第八号証ないし第二六号証によりば、スピルリナは、アフリカや中南米の塩湖に自生する、らせん状をした藍藻類に属する微生物で、その地方では古くから食用に供されていたこと、毒性がなく、蛋白価が高く、各種ビタミン類やミネラルなどの栄養成分が豊富であることから、アメリカ、フランス、メキシコ等において食品としての研究開発がされ、また日本においても海外で養殖されたスピルリナの粉末を原料とした錠剤が保健食品として市販されているほか、専門誌だけでなく新聞、雑誌等にもスピルリナの紹介や利用面における課題が記載されていることから、スピルリナがいわゆる健康食品や自然食品と呼ばれる商品に利用されていることが一般に知られていること、また、養殖魚類の飼料として、特に錦鯉の色揚げ飼料としても利用されていることが認められる。」との判断を示している。

上告人が右上告理由第一点とするところは「スピルリナ」なる文句を以て対象とする表現は物品として現在存在するものではなくこれを研究定立させるための研究上の用語であって(然も研究は定立していない。)、原判決が認定したように右摘示上の判断が単純に雑記本的雑誌に論拠を措く時は判決に影響を及ぼすこと明かなる法令違反ありというに十分な条理違背があり、条理上不成立な判断であって、然もかかる場合のスピルリナの類(種に非ず)に属する粉末は蒸煮を施し特有な技術手段を以てしなければ粉末を製造すること不能なものであるから、原判決の判断が民事訴訟法第三九四条、及び同第三九五条第一項第六号に該当すること明白である。

上告理由第二点とするところは原判決は「三 原告は、商標法施行規則別表第三三類指定商品中には、本願商標に係る商品ないしその原材料に「スピルリナゲイトラー」の名称はないから、本願商標は商標法第四条第一項第一六号に該当しない旨主張する。

原告の右主張するところが、本件審決の取消事由としていかなる意味を有するか必ずしも明らかではないが、原告は、本願商標を、第三三類「飼料、植物、動物その他本類に属する商品」を指定商品として登録出願したものであるところ、商標法施行規則別表第三三類はその商品区分を「穀物、豆、粉類、飼料、種子類、その他の植物および動物で他の類に属しないもの」とし、その中の飼料中には、「米ぬか、しょうゆかす、大豆油かす、でん粉かす、肉粉、魚かす、配合飼料、混合飼料」が、その他の植物および動物で他の類に属しないもののうち、植物としては「草、花、苗、苗木、盆栽」が、動物としては「獣、鳥、魚、虫、種まゆ、蚕種、種卵」が、それぞれ揚げられているが、その記載からも明らかなとおり、これらの商品あるいはその原材料としての商品のすべてが記載されている訳ではなく、それらの代表的なものが例示されているにすぎない。

二上告人が右上告理由第二点とするところは単純に斯界に於て横行する独断論に商標の内容判断の基準を準拠して「商標法が第四条第一項第一六号において品質の誤認するおそれがあるとしているのは当該商標自体、すなわち、当該商標の外観、称呼及び、観念からみているものであって、成令表あるいは効能書の記載によってそのおそれがあるか否かは本来関係のないことであるから、原告の右主張は理由がない。」と断定しているが、その外観、称呼、及び、観念こそ、対象たる商標自体を了知する謂われではなく、古代「アリストテレス」の発見し世界に定着している論旨として「個、ないし、個性とは主語になって述語にならない対象であると定立され、」外観、称呼及び、観念の如きは単なる述語であって、諸般の事実として表現可能であり、、例えば、「スピルリナ」を目して「スピちゃん」というも観念、称呼は成立するというを得るに至り、その理性とか、歴史的観点に於ける偶然性とか、変化性とかの論理は成立せず、世界に於ける人類の社会活動的、理性的論理は右外観、称呼及び、観念の如き愚論に準拠していることなし。よって原判決の判断は根底的に誤りを犯して居り、民事訴訟法第三九四条、同第三九五条第一項第六号に該当し当然破棄されるべきである。

商標それ自体を外観、称呼及び、観念によって評価すべき法令は全く存在していないことを付加する。

前記のとおり、スピルリナが藻類の一種であって健康食品や自然食品と呼ばれる商品に利用されていることが一般に知られているほか、飼料としても利用されていることから、本願商標を指定商品中のスピルリナを含有しない飼料について使用するときは、その商品があたかもスピルリナを含有するかのようにその品質について誤認を生じさせるおそれがあるというべく、したがって、商標法施行規則別表第三三類に属する商品の例示中に、本願商標を構成する「スピルリナゲイトラー」ないし「スピルリナ」の記載がないからといって、本願商標が商標法第四条第一項第一六号に該当しないとはいえない。

また、原告の右主張するところが、商品の成分表あるいは効能書を見ることによって、当該商品にスピルリナが含有されているかが判明するから、品質を誤認するおそれはない旨の主張であるとしても、商標法が第四条第一項第一六号において品質を誤認するおそれがあるとしているのは、当該商標自体、すなわち当該商標の外観、称呼及び観念からみているものであって、成分表あるいは効能書の記載によってそのおそれがあるか否かは本来関係のないことであるから、原告の右主張は理由がない。

さらに、原告の右主張するところが、スピルリナを原材料とした食品あるいは飼料が現存しないから、「スピルリナ」を商標に使用しても品質を誤認するおそれがない旨の主張であるとしても、前記二に記載のとおり、スピルリナは自然食品あるいは健康食品として知られているところであるから、原告の右主張は理由がない。

なお、原告は、本願商標が商標法第三条第一項第三号に該当しない旨主張するが、本件審決は、本願商標が商標法第四条第一項第一六号に該当する旨判断したのであって、同法第三条第一項第三号に該当することをもって審判が成り立たない旨判断した訳ではないから、原告の右主張は理由がない。」との判断を示している。だが、右法条に対し各違背の判決に変りはない。

三上告人が右上告理由第三点とするところは、本件商標出願は当然商標法施行規則別表第三三類と認定すべき論拠はなく現行法に於ける右商標法施行規則別表の社会生活的、日常性により上告人が定めたものであって(また、定め得るものであって)、原判決は根本的に判決に誤謬のある判断を犯しているものであり、民事訴訟法第三九四条及び同法第三九五条第一項第六号に該当する法令違背がある。

即ち、上告人が上告理由第三点とするところは原判決は「四 原告は、「スピルリナ」が、いわゆる健康食品や自然食品と呼ばれる商品に利用されていることが一般に知られている事実はなく、また、錦鯉の色揚げ飼料として利用されている事実はない旨主張する。

しかしながら、前記二に記載のとおり、スピルリナを原材料とした食品が市販されているほか、「スピルリナ」の語がいわゆる健康食品や自然食品と呼ばれる商品に利用されていることが一般的に知られており、またスピリルナが錦鯉の色揚げ飼料として利用されているから、原告の右主張は理由がない。」との判断を示している。

四上告人が上告理由第四点とするところは、原判決は「五 原告は、本願商標を不可分一体のものと見ないことは誤りである旨主張するが、本願商標の「スピルリナゲイトラー」は、長音符を加えて一〇文字、九音で構成されていてかなり冗長であり、前記のとおり、スピルリナが自然食品や健康食品として周知であるから、「スピルリナ」と「ゲイトラー」の二語よりなるものと理解される場合も少なくないものとみられるから、原告の右主張は理由がない。」及び「六 よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担及び上告のための附加期間について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第一五八条第二項を各適用して主文のとおり判決する。」との判断を示している。

然しながら上告人が上告理由第四点とするところは理の必然として商標に対する判断は分割なし得ないとしているものであり、また、その余の理由は右各上告理由に明確に準拠するところにより原判決は民事訴訟法第三九四条及び同第三九五第一項第六号に該当する。

以上

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